和興自動車 株式会社

和興自動車

———和興自動車の設立は「連続テレビ小説が始まった昭和36年」と、ホームページに載っていますね。しかも、ずっと“千波交差点のそば”なんですね。
大泉
:そうです。まず私の祖父が代表を務めるバッテリーや車の電装部品など、自動車関係の仕事をしていた「鉾田電機株式会社」が、元々この地にあった和興自動車という会社を買いました。そして、祖父の後に父が社長となりました。

今の規模に育てたのは、父であり、現会長である2代目です。新車の販売に始まり、修理や整備を数多く引き受けるようになり、法人客のみならず個人のお客様とも、お付き合いするようになりました。そして、多くの個人のお客様との接点をつくるために水戸の1号店としてカーコンビニ倶楽部をはじめました。

その後、「IS09001」を認証取得している「エア21車検」に加入しました。高品質で顧客満足度の高い車検です。次は新車販売にも力を注ごうということで、2002年、スズキアリーナ店になりました。ですから、2代目が95パーセント、今の形をつくったと言えます。

当社は創業以来、各メーカーのディーラー本社があつまる、千波町で営業しています。「競争が激しくて大変ですね」と言われますが、お客様にとっては都合いいですよね。あちこち足を運ばなくても、一か所に車関係の店や工場が集まっているわけですから。

———新車販売台数は減少傾向にあります。にもかかわらず和興自動車さんは業績好調です。どんな経営をされているんでしょうか。
大泉
:乗用車の販売台数を見ても、2020年は前年比87.8パーセントですからね。たしかに新車は売れなくなりつつあります。車の性能は良くなり、事故も減り、車の買い替えが減っています。若い人の車離れが進み、カーシェアリングも少しずつ普及しています。

私どもも、新車販売だけに頼らず、整備・鈑金塗装修理にも力を入れてきました。その需要に応えてきたので、落ち込むこともなく現在に至っています。販売・車検・鈑金塗装修理のウエイトバランスがよいのが特徴でしょうか。車検や整備に加え、鈑金塗装修理の腕も高い評価をいただいています。今後一層、販売はしっかりしながらも整備・鈑金塗装修理でも成り立つ店にしたいと考えています。

売上高だけを第一に考えるなら、新車を売るにかぎります。新規客を獲得すればよい。でも、私たちは既存客を第一に考えてきました。一度出会ったお客様と長くお付き合いしたい。だから車検や整備、鈑金塗装修理に力を注いできました。その姿勢が評価されているのだと思います。結果的に新車に買い換えてくれたり、家族の車を買ってくれたり、社用車として買い続けてくれていると思います。営業社員もいないのに。

———営業がいないんですか? お話を伺っている、ここは、他社のショールームと同じく、打ち合わせ用のテーブルがいくつもありますが、営業さんはいない?
大泉
:はい。「全員で売るぞ!」とばかりに、背広を着て車の説明だけをする営業担当はひとりもいません(笑)。お客様に接するのは、すべての社員です。平日は、つなぎを着て作業をしていますが、土日はポロシャツとチノパンに着替えて接客している社員もいます。

通常、ディーラーの整備士はあまりお客様としゃべらない人もいます。でも当社は、整備を手がけた社員がお客様に直接、説明をします。もし、お客様が車購入の相談があれば、整備士もしっかり対応します。「うちは接客してもらいますからね」と、採用時に言ってるんです。整備できるのは当然で、前向きで向上心があり、笑顔のいい人を採用しています。お客様の前に出て話せる人を雇用しています。会長(先代)はずっと言い続けています。「お客様にわかりやすく話さなきゃだめだよ」と。ただ、言うだけでは成長しませんから、とにかく一人ひとりに接客の機会を多く与えています。

正直申し上げれば、生産性はよくありません。整備と営業を分けていませんから。でも、接客できる整備士のほうが、お客様にとっていいに決まっています。ネットでも車は買えますからね。人とのふれあいに価値を感じてもらう接客ができてはじめて、この店へ来てよかったと思っていただける。そう考えています。

———先代は名経営者ですから、大泉社長も子供のころから経営者としての“帝王学”を学んできたのでしょうか。
大泉
:会社を「継がないか」と言われたのは、僕が27歳のころでした。それまでは言われたことがなかったので、システムエンジニアをしていたんです。29歳で決断し、まず3年間、スズキで整備の仕事も販売の仕事も経験し、水戸に戻ったのが2012年。代替わりしたのは2020年です。

帝王学など何も学んでいませんが、会長がどのようにお客様と社員に接してきたかは、見てきました。腰が低く、物腰がやわらかく、人当たりがよく、お客様に対して、ていねいに、ていねいに接していました。

また、「工場をきれいにしなさい」と、常に5Sを言い続けてきました。床だけでなく、つなぎは「常にきれいなものを」「早く買い換えなさい」と。整備や鈑金塗装は汚れやすいですから。そして、いつも笑顔ということです。トップが笑顔だと、従業員もお客様も、みんな笑顔になるんだ…と気づきました。

お客様がおっしゃるんです。「スズキの車は、スズキアリーナで買えば、どこでも同じだけど、接客がよく工場がきれいなところがいい」と。
経営者として、会長のやってきたことの8割はそのまま受け継いでいきたい。あとは、世の中の変化にどう対応していくかです。常に新しいことに挑戦することと、人を育てていくのが私の使命です。

———就業規則は時代に合ったものに作り直しましたね。経営理念もあります。“いい会社”の完成度は高いのではないでしょうか。
大泉
:就業規則を変えるまでは“昭和の会社”でした(笑)。今は平成、令和の会社です。人並みの給料を支給できていると思います。人並みの休みもある。残業はそんなに多くない。生え抜きの社員で家族持ちはみんな自宅を建てていますしね。ホワイト企業です! と言い切れないにしても、かなりホワイト寄りだと思います。

しかし、厳しい言い方をすると“ゆるい会社”です。これからは目標を立てて、各自がしっかりと手応えのある仕事をしていきたい。

ありがたいことに、お客様からは「このお店に来てよかった」と言っていただけます。全従業員が一生、「この会社で仕事ができてよかった」とやりがいを感じてくれる会社にしていきます。

和興自動車 株式会社
〒310-0851 茨城県水戸市千波町 1873-4
TEL 029-241-3333
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