株式会社 海野ガーデン

海野ガーデン

———大きなハウスが並んでいたり、庭木がたくさん植えられていたり、広大な敷地ですね。造園の仕事のほか植木のレンタルもされているので、土地も人もたくさん必要ですね。
海野
:はい、もともと祖父の代まで農業をやっていましたので、本社があるここ、ひたちなか市の中根だけで2400坪ほどあります。祖父は、農家なのに家庭裁判所の調停員など、土をさわらない仕事に打ち込んでいました。この土地を受け継いだ父も「農家は大変だ」と思ったらしく、造園業に変えてしまったのです。「野菜を育てるのは、とても手間がかかるが、木を植えるのなら手入れが楽だろう」と考えたみたいです(笑)。実際は樹木も大変なんですけどね。

父が継いだころ、貸植木が普及し始めました。会社の事務所や店舗に鉢植えを置く、グリーンレンタルという事業です。その後、生花も扱うようになり、おかげさまで順調に伸びてきました。従業員もパートさんを含めると50名弱です。図体だけ大きな会社にならないようにと、気を引き締める毎日です。

———海野社長は、早い時期から家業を継ぐおつもりだったんですか。
海野
:まったく思っていませんでした。祖父が亡くなったとき、父はこう言ってたんです。「農家を継ぐのがいやで始めた仕事だから、おれのあとを継げとは言わない」と。だから私は安心して(笑)、東京でサービス業をしていました。ホテルとマンションのコンシェルジュです。

ところが、年をとってきたからでしょうか。帰ってきてほしい、継いでほしいと。2011年のことでした。当時、私は独身。身軽でした。これも運命かな…、継がなきゃいけないだろうなぁ…、しゃんめぇー! と戻ってきたわけです。

入社して6年間ほど仕事を覚え、2018年に代替わりしました。
最初は心配でした。社長が代わると、辞める人もいるのかなと。50人弱の会社ですから、私が社長になったことで社員が減ってしまっては大変です。社員とフランクに付き合いたい。そのためには、働きやすい会社にしなければ…、ということで就業規則をつくり直そうと思ったんです。休憩時間など、現状にあったものにしなければなりませんからね。

———海野社長は、初めてお目にかかったときから「いい会社にしたい!」と、おっしゃっていますよね。
海野
:ええ。私どもは機械化できない業種です。人しだいの会社、人あっての会社です。人がいい会社。人と人とのつながりがいい会社。人と会社の関係がいい会社。そんな会社にしたいと思っていました。

でも現実は猛暑のなかの作業など、労務的になにかと厳しい仕事です。どうすれば働きやすい会社になれるだろうかと考えてきました。今後、新しく入ってくる人には、厳しい作業だけれど、人々を癒す仕事だから、やってみたい! と思われたい。草花や土をいじることで、働く人自身の癒しにもなると思ってもらいたい。そう考えていました。

父の時代はワンマンが通用したかもしれませんが、今は労務管理がむずかしい時代です。その点、大泉先生にお願いして就業規則も作り直しましたから、ホワイト企業になることができたと思います。休憩時間など、現状に合った内容に変えることができて、従業員は安心ですが、私のほうも、もっと安心しました(笑)。社長交代を機に労務管理を整備してよかったと思っています。

———店舗で販売するフラワーショップ、会社やお店へのグリーンレンタル、そして県下有数の大きな公園の管理など、業務が多岐にわたっています。さまざまな職種の人材をどのように育てていこうとお考えですか。
海野
:会社全体で申し上げると、“人を育てられる人”を育てていくのが現在の課題です。いくつかの部門がありますが、各部長がどのように自部門の人材を指導し、育てていくか。まずは幹部育成が重要と考えています。

公園の仕事はやりがいがあります。215ヘクタールもある国営の海浜公園で仕事ができるのは、従業員にとって誇りでもあります。この仕事は、とにかく人数が必要です。仕事はたいへんだけれど、女性も多く採用したいですね。花を植えたり、手入れをするだけなら、さほど問わないのですが、接客力、対応力も求められるからです。公園に遊びに来たお客様が「きれいな花ですね」とか「なんていうお花ですか」「どのように手入れすればいいんですか」などと話しかけてくれますから。

となると、採用のしかたが重要です。募集広告を打つ場合でも、「現場作業員」と書くと男性向きの力仕事に特化していると見えがちです。そこは工夫しています。

フラワーショップのほうは、専務である母がみてくれていますので、私としては気が楽です(笑)。ただ、ショップでどのように対応するかはとても大事です。お花を買って、気に入ってくれたお客様が、会社のグリーンレンタルにつながったりします。あるいは、お花を買いに来たお客様に、庭木の剪定(せんてい)を依頼されることもあります。

大切なのは、お花や樹木、観葉植物を提供できる人ではなく、癒しを提供できる人を育てることだと思っています。

———2代目経営者として、先代と異なる点はありますか。
海野
:祖父と父は顔が広く、いろいろな役を引き受けていました。私は、お客様と従業員との接点を深く持ち続けていこうと思います。

それにしても先代は大きな存在でした。最近は、父に代わって私も会合に出ていますが、本当に大勢の方が声をかけてくださいます。「お父さんにはお世話になりました」「お父さんはすごい方です」と。私、小さい頃は父に似ているのでイヤだったんです(笑)。父と並ぶのがイヤでした。でも、今は思います。父はすごいなぁ、親子でよかったなぁと。いい父であり、経営者だったと…(令和2年12月他界)。だから、いいところはそのまま受け継ぎ、さらにいい会社にしていこうと決意を新たにしています。

フラワーショップ

株式会社 海野ガーデン
〒312-0011 茨城県ひたちなか市中根5072番地
TEL 029-273-6013
https://www.uminogarden.com/