社会福祉法人 茨城補成会

茨城補成会

———社会福祉法人 茨城補成会さんは、障害児者の入所施設や児童養護施設など、10以上の福祉施設を運営されていますが、ホームページのトップには「まちをつくる」と出てきます。「まちをつくる」とだけ。
檜山
:もともと僕の卒論のテーマは「まちおこし」です(笑)。福祉の仕事って、主役は当然、人です。にもかかわらず、福祉事業者はどんな建物をつくるかを考え、その箱の中での福祉サービスで、いかに利用者さんが楽しく過ごせるかを追求するだけで、満足しています。

決してそれだけじゃない。世の中にはいろんなモノゴトがあって、たくさんの出会いや可能性が広がっています。行政が主導する福祉サービスは、一部の人にしかあてはまりません。サービスとサービスのあいだにうもれている人たちがたくさんいます。世間で提供されている福祉という枠にとらわれない関わり方が求められているはずです。

そう考えて、施設の敷地を越えて、地域の人たちと一緒に暮らしていくコミュニティをつくろうと思っています。

だから僕たちがやろうとしているのは「まちづくり」「ひとづくり」なんです。「行政がつくった町に、あなたは住みたいですか? その町で暮らしてあなたは幸せですか?」というキャッチコピーもあります(笑)

———「行政がつくった町じゃない町をつくろう!」という、信念をもってこの世界に、補成会を選んで入ったのですね。
檜山
:いや、ここ(茨城補成会)だけは入りたくなかった(笑)。この補成会の前の理事長と僕の父は同級生だっただけじゃなく、親戚の人たちも勤めていたので、幼い頃から出入りしていて、私にとってここは第2の家みたいな感覚、働くというイメージがわきませんでした。

卒業後、僕はまったく畑違いである某百貨店に勤めていました。トップセールスマンだったんですよ。某百貨店で。ところが、長男である私を家に戻したく、父親達がたくらんで、某百貨店に勝手に退職届を出したんです。そうです。僕の退職届を、私にことわりなく勝手に(笑)。負けました。まあ、当時ここは公務員のようなパブリックな仕事でしたから、安定していると思って勧めてくれたのでしょう。

補成会では当初、経理をやらせてもらいました。営業ができて、経理ができれば起業もできると思ったからです。経理ですからすぐわかったのですが、補成会はあまり裕福ではありませんでした。生産性を追求する事業ではないから当然というか、やむを得ないのですが、このままだと1、2年で損益分岐点をクロスしてしまう…なんとかしなければと思いました。そこが発端です。

———「ここだけは入りたくなかった」補成会に入り、いつしか「まちをつくる」と。フレンチレストランはなぜ作ったのですか。
檜山
:どんなに重い障害をお持ちの方でも、食べることは大好きです。めちゃくちゃ笑顔です。幼くして入所した園児の中には家庭の味を知らない子もいます。大好きなことを満たしてあげたいし、家庭の味を教えてあげたい。だから社会貢献が好きな「シェフいませんか!」「パティシエいませんか!」と、いろんな人に声をかけ続けました。

最初はスイーツ工房です。地元の卵にこだわったシフォンケーキなどをつくって販売していますが、利用者さんが地域に参加する機会ができました。

まちづくりの事業化としての第2弾は、フレンチレストラン『ビストロ・ラ・ポルト・アミ』です。老舗フランス料理店の創業者であるシェフを職員として採用しました。

障がいのある利用者さんには“セルヴァー・ギャルソン”という給仕の仕事をお願いしています。ここは福祉サービス事業のレストランです。

「給料をもらえる仕事があるって励みになりますね」といって本人はやりがいをもって働いています。仕事と暮らし、誰もが安定、安心するまち、共生社会をつくりたいとおもっています。

ほかにも、子育てや発育に関するサービスを無料で提供したり、子育て支援センター、児童発達支援センターをつくったりと、育児の安心サポート、地域とつながる事業も展開しています。

———いまでも多数の建物が広い敷地に点在していますが、「まち」はこれからもどんどん大きくなるんですね。
檜山
:職員や利用される皆様が「これをやりたい!」というものがあれば、やってみよう!と思っていますので、どこまで広がるかわかりません(笑)。

現在、6万ヘクタールの敷地に、利用者さんが暮らすだけではなく、働いたりして活躍できるたまり場をつくり始めました。

イオンタウンのような地域の人から喜ばれる施設、生活や就労の福祉拠点をつくれればいいなと思っての企画です。障害者支援施設は『ガッツ村』と名付けましたが、「村」とか「まち」と名乗る以上、1万人くらいが楽しく集うコミュニティの場にしたいですね。

社会貢献に興味がある人、福祉の素人でも、ぜひ、当法人をお尋ねください。「あなたの得意を社会に還元してみませんか。集まりましょう。」と呼びかけたいです。

———「まちづくり」は見えてきました。あとは「ひとづくり」ですね。
檜山
:いまいる職員は育ってきているし、そのおかげで“人が主役”の企業になっていますから、それこそ大泉さんのところじゃないですけど、うちはホワイト企業です。

といっても、甘やかしているわけではないんですよ。法人が倒産してはしかたないですから、指針書や“理想の職員像”も、しっかり示してやりがいをもって働いてもらっています。同時に、働きやすい職場でなければならないし、どうしたら自分の人生が豊かになるかを職員皆で考えています。

うちはね、残業したければしてもいいと言ってるんです。夜勤を増やしてくれと言えば増やします。でも、疲れたら休めよ、と。

その点、社労士ってかたいけど、みんなが喜ぶ制度を提案してくれるから助かります。おかげで、うちは茨城で社会福祉法人認可では一番古い方ですけど、やっていることは一番新しいことができていると思っています。これからも伝統ある法人、補成会人のプライドを持ち続け、利用者さんも職員も法人も必ず守っていきますよ。

社会福祉法人 茨城補成会
〒311-3122 茨城県東茨城郡茨城町上石崎4698-2
TEL 029-293-7401
http://ibaraki-hoseikai.jp/