株式会社 祐月本店

株式会社 祐月本店 代表・和田幾久郎氏

———祐月 本店さんは明治23年(1890年)創業。130年の歴史があるんですね。御社の「人形卸センター」には、ものすごくたくさんの人形が展示されていて驚きました。
和田
:おかげさまで長い年月にわたりご支持いただいております。1000点以上の品揃えですから、日本最大級の人形展示場です。人形を通じて日本の文化を継承し、守り、繋いでまいりました。人形を販売してきたからではなく、伝統の技と心、日本の伝統文化を継承してきたから今日があるのだと思います。

しかし今後、次代へと繋いでいくことは決して容易ではありません。人材の確保がむずかしいからです。「伝統文化が好きで、この仕事で食べていく」という人は少ない。いまの職人さんも子供に苦労はさせたくない。成長産業ではありませんからね。

本来、我が国の伝統文化を継承させるためには、国が人材を育成していくべきですが、引き続き私どもで若い人を育て、世代交代をはかっていかなければと考えています。

———節句人形のほかミネラルウォーター製造宅配事業も展開していますが、なんと平成8年にアウトドアショップもオープンしましたね。人形とアウトドア。どんなつながりがあるのでしょう。
和田
:つながりはありません。ひとことで言えば、私がアウトドアが好きだったからです(笑)。山岳部だった父の影響も大きいと思いますが、家族旅行と言えば登山やスキーに行ってたほどアウトドア好きの家庭に育ちました。

もうひとつ理由があるのですが、じつは私、洋楽を通してアメリカの文化にあこがれていました。中学のときからアメリカに留学する!と決めていたのですが、願いが叶って高校の留学生第1号としてシアトルに留学したんです。シアトルはアウトドアのメッカ。自然のなかに都市機能がある、環境がいい街です。

私はそれまで自然が身近にあるのは田舎の証拠、かっこ悪いと思っていました。水戸は文明が遅れていると(笑)。それがシアトルに住んで世界観が変わったんです。ホストファミリーとアウトドアを満喫し、自然はなんていいものだろうと。

高3の夏休みに帰国し、大学へ進んでからは、夏休みを利用してアメリカへバックパッキングです。夏休みの前後をプラスして3カ月くらい、長距離バスを利用してアメリカ全土をほぼ回りました。話すと長くなるので、ここでやめておきますが、こんな私ですので、どうしてもアウトドアショップをやりたかったんです。いまなら恐怖感でできませんが(笑)

———アウトドアはブームが続いています。競争相手も増えています。
和田
:オートキャンプに始まり釣りブームや百名山ブーム、最近だと山ガールにソロキャンプと、たしかにブームは続いています。アウトドアショップ『ナムチェバザール』をオープンしたときも現在も、いろんな業種が参入していますが、当社は最初から本物志向の店づくりをしてきました。

ホームセンターではレジャーとしてのキャンプ商品を扱っているし、チェーン展開すると魅力が薄れます。質のいい、本格的なものだけを扱うことで差別化をはかろうと。その点、ドーンと伸びることはありませんが、ガーンと落ちることもありません。

ただ、26年やってきて最近思うのは、小売としての機能が問われているということです。アウトドア用品に限ったことではありませんが、お客様は目当てのものをお店で買うものでした。ところがいまはネットで買える。メルカリで買える。海外で買える。レビューを見て買う。インスタグラマーやブロガーの影響を受ける。小売の存在価値が問われていると思うのです。

当社はオープン以来、ツアーやスクールなどのソフトや情報を提供してきました。商品だけを売るのではなく、アクティビティー体験と自然に触れることの喜びを提供してきました。これからは、さらに地域のアウトドア文化を育てる事業に取り組んでいきます。

———人形も、売り方は変わりつつありますか。
和田
:否が応でも変わってきているというのが現状です。子供の数が減りつつあるいま、市場が縮小しているのはやむを得ません。問題は買い手側にあるのではなく、人形を売る側にあると思います。

人形業界は、既存の商品を既存の売り方で競い合うだけ。さらにネットや量販店が、人形本来の存在価値を考えずに売ってしまうから、自らマーケットを小さくしています。子供ができたから購入する。孫ができたから買ってあげるといった買い方に応えるため、手軽に買いやすいものを提供しています。自分たちで人形を要らないものに変えてしまっていると言っていいでしょう。これでは、いずれ成長できなくなる。

驚かれるかもしれませんが、人形は決して子供のためだけではありません。では何のためか…を話すと、これまた長くなりますので、続きはお店で(笑)

———僕は、車中泊はよくしますがアウトドアは落第生。人形をはじめ日本の伝統的なものはさっぱりわからない人間ですが、和田社長はなぜ、大泉のセミナーに参加されたのですか(笑)
和田
:労務関係は劇的に変わっていますから、勉強しなくちゃと思っていたときでした。といっても、法律の事実だけ伝えられたところで、生身の人間が集まる経営の現場に活かせない。その点、大泉さんのセミナーは、“心がありそう”だと思ったんです。チラシに書かれたことが人間味にあふれていて、ひかれました。なんとなく聞いてみたかったんです。

法整備のなかで守って仕事をするのは当然ですが、その上で働いている人たちが誇りに思える環境をつくっていこうと考えています。そのためには、有能な人たちがフレキシブルに、いかに才能を発揮させ、意欲と満足感を得ながら働いていくかが重要です。それが本当の意味でのホワイトだと思っています。

株式会社 祐月本店
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TEL 029-222-1117
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